物々交換に関する洞察は幅広く、表面的に物々交換と見ている分析も、実は物々交換などではなく贈与の体系として経済生活、部族生活、道徳生活のすべてに行きわたり、浸透しているということが見えてくる。この見方によると生活は永遠に与えることと取ることである。これらは事例を特定の部族に限定して採用しているが現代のわれわれの生活の根底にその思想は残存している。いや残存でなく、これらの体系が現代の経済、道徳を支えている。これを見ていると、経済学者の議論が浅薄に見えてくるから不思議だ。全体性の魔術ともいえるだろう。さまざまな書評にも書かれているが、この書物は限りないインパクトを与える力を秘めている。